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PSYCHE オリーブオイル産業の再定義

セオフィロス・コンスタンティノウのオリーブオイル戦略



ニューヨークでハッスル中のYoshiから、「クールなオリーブオイルを見つけた」と連絡が入った。オリーブオイル?と思いながらも、紹介されたのが Psyche Organic。

サイトを開いてまず目を奪われたのは、ロゴやフォント、そして全体的に統一されたアートディレクションのセンス。しかも、ボトルはガラスではなく、まさかのプラスチックバッグ。かっこい…い……いーや、待てよ。どうせ最近よくある“おしゃれ系”フードブランドなんじゃないかと私は疑ってかかった。 

そんなモヤモヤを抱えたまま、もう少し掘ってみると、SNSではファッションブランドとのコラボや、クールでコミカルな投稿が並び、さらには筆者が敬愛するギタリスト、日高理樹のライブまで主催していることが判明。

そもそもオリーブオイルには、紀元前4000年にまでさかのぼる壮大な歴史がある。 古代の神話や宗教儀礼にも登場し、人類の暮らしと切っても切れない“太古のライフライン”であり、文化的象徴として今日まで愛されてきた。

しかし現代では、大量生産・大量消費の波に飲まれ、偽装表示や不透明なサプライチェーンなど、オリーブオイル業界には課題が山積みだ。ラベルや見た目だけで、中身の価値を見抜くのは非常に難しい。

そんな中、Psyche Organicは、「確かなクオリティのオリーブオイル」と「カルチャー」を、華麗に融合させようとしている。

Psyche Organicがやっているのは、オリーブオイルという媒体を通じたカルチャーとの対話だ。アートや音楽と並列に存在する『表現』としての食材。

「食は薬」──そう語るTheoの作るオリーブオイルには、思想、美意識、そして仲間とのリアルが詰まっている。


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MCNAI:まずは、Psyche Organicの誕生についてお伺いしたいです。もともとは出版業界でご活躍されていたと聞いていますが、そこからオリーブオイルのブランドを立ち上げるに至った経緯を詳しく教えてください。


Theo:それは「運命」だったんだ。2020年は、僕が運営していた「PARADIGM」という出版社は絶頂期だった。でも、COVID-19が起きたことで、出版業界そのものが一気に縮小してしまった。そんな中、自分のメンタル面での健康の不調から、故郷のギリシャに戻ることになって、果物や野菜を育てる機会に恵まれたんだ。一緒に農業をしたのが、パナヨティス・マニキスという農家で、彼は70年代にあの福岡正信*さんに弟子入りした経験があるんだ。

パナヨティスとの出会い、そして福岡さんの食に対する価値観に触れたことが、すべての始まりだった。もともと僕は本を出版して、アートの世界で生きていくつもりだったんだけど、そこから方向転換して、「食」の分野で何かを生み出したいと思うようになったんだ。

そこから食のフィールドでの活動に興味を持ち始めたんですね。過去のインタビューを読んでいて、とても印象的な言葉を見つけたんだ。「食は薬である」っていう言葉。これはどういう意味なのか、詳しく教えてもらえる?


実はそれ、僕自身の言葉じゃなくて、古代ギリシャの医師で「医学の父」とも呼ばれるヒポクラテスの言葉なんだよ。彼が言った “Let food be thy medicine.”(食を汝の薬とせよ)という言葉に由来してる。すごくシンプルだけど、本質的で正しい考え方だと思う。

僕たちが口にするものは、健康の土台になる。自然で質の高いものを食べれば、体調はよくなる。それって、誰にでも実感としてわかることだよね。


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たとえば昨日のことなんだけど、映画を観ながらチョコレートを大量に食べちゃったんだ。リースのピーナッツバターカップをバクバクと…。で、今朝はもう胃が痛くて仕方なかった。あれは「食べ物」というより、ほとんど加工された砂糖の塊だからね。

その点、日本に滞在していると、本当に体調がよくなる。新鮮なものを食べる機会が多いし、加工食品も少ない。日本に来るたびに、食文化の違いを感じさせられるよ。

アメリカでは、食のシステム自体が人々の健康を損なうようにできているように感じる。病院や製薬会社は、病気を予防するよりも、病気になった人を治療することで利益を得ている。だから、質の低い食品が平気で売られて、それを食べた人が病気になる。そして医療システムに取り込まれていく。

スーパーに並んでいる食品の多くは、遺伝子組み換えや化学的に処理されたもので、本来の意味での「食べ物」じゃないように思う。

だからこそ、「食は薬」なんだ。オリーブオイルもそう。抗酸化物質やポリフェノールが豊富で、抗炎症作用もある。しかも美味しい。これはもう、まさに天然の「薬」だよ。

日本にも似たような考え方があります。たとえば味噌。味噌って、薬のような存在で、日本では健康にいいものとして毎日摂る習慣がある。納豆もそうです。


まさにその通り。伝統的な食品には、それぞれの文化に根ざした「健康を支える知恵」が詰まってるんだよ。


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話を聞いていると、Psyche Organicって、単なるオリーブオイルブランドじゃなくて、ある種の「薬」としての役割も持っているように感じます。ただの食べ物以上の価値があるというか。それと、以前のインタビューで「市場での競争を避ける」と話していたのもすごく印象に残っています。オリーブオイルを売る以上、当然ながら競争は避けられないと思います。。スーパーの棚に並べば、他のオリーブオイルと比べられることになりますよね?あなたが考える、「競争を避ける」って、どういう意味ですか?


いい質問だね。僕の考え方を説明するのに、一番わかりやすい例が「スポーツ」だと思っていて。

昨日、90年代のNBAのハイライトを観ていたんだけど、改めて思ったよ。マイケル・ジョーダンって、結局「自分自身としか競争していなかった」んだよね。もちろん対戦相手はいたし、90年代のNBAは本当にレベルが高かった。でも、ジョーダンの本当の戦いは「他の誰かと競う」ことじゃなくて、「昨日の自分を超える」ことだった。

それと同じで、僕も他のオリーブオイルブランドと競争しているつもりはないんだ。GrazaやBrightland、Frankiesのことも意識していない。だって、僕は「僕にしかない存在」だから。

デザインも、ブランドの世界観も、すべて僕自身の個性から生まれている。他の誰かが同じものをつくることなんて、できない。


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お店の棚を見てもらえばわかるよ。他のオリーブオイルはガラス瓶だけど、Psyche Organicは唯一「バッグ入り」。これはオリーブオイルは日光に晒されることで酸化が進むから、不透明バッグに入れているってのもあるんだけど、誰が見ても、明らかに違うよね。

マーケティングだって同じ。昨日、僕のInstagramに投稿した動画を見た? (二人の女性がジャンケンをして、買った者がPsycheのオリーブオイルを獲得できるという、AKB総選挙のパロディ動画)あれ、笑ったでしょ?笑あんなことをするオリーブオイルブランド、他に見たことある?

こんなふうに、「競争」なんて僕には関係ないんだ。僕はただ、「自分が面白いと思うこと」をやっているだけ。その結果、「Psycheってなんか違うね」って思ってもらえるんだ。

それに、最終的には「味」がすべてを証明する。どんなにマーケティングが上手でも、実際に口にして、「あ、これは違う」って感じてもらえれば、それが本物の証なんだ。


それって、日本の職人文化にも通じる話だと思います。たとえば鯖江(Sabae)の眼鏡。


そう、それ! 鯖江の眼鏡職人の技術って、世界トップクラスだよね。もちろん、イタリアやフランスの眼鏡も素晴らしい。でも、鯖江の職人が作るものには、やっぱり唯一無二の品質がある。

僕のオリーブオイルも、そういう存在でありたいと思ってる。


つまり、「唯一無二であること」こそが、競争を避ける方法だと?


その通り。他と比較できないくらい独自のものをつくれば、「競争」という概念そのものがなくなるんだ。


マーケティングの話にも移りたいんですが、YoshiからPorterでのポップアップのことを聞きました。それに、Instagramを見ていて思ったんだけど、Psycheに興味を持っている人たちって、単なる「食」に関心があるだけじゃなくて、ファッションやアートといったカルチャーにも深く関わってる印象があります。こういう人たちが食を通じて集まるのって、すごく珍しいことだと思うんです。これは自然に起こったことですか? それとも、意図的にコミュニティを作ろうとしたんでしょうか?


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それは別に意図してやったわけじゃない。ただ、僕がそういうバックグラウンドを持っているから、自然とそうなったんだよ。

僕はもともと「PARADISM」を通して出版や写真の世界で活動してきたし、その分野ではある程度評価もされてきた。たとえば最近では、東京でBlankmagTeamclubと一緒にZINEを出したり、Urban Researchで僕の写真を使ったTシャツやスウェットが販売されたりしている。それに、Grind Magazineでは定期的にコラムも書いている。

だから自然と、ファッション関係の人やグラフィティアーティスト、スケーターなど、クリエイティブな仲間が周りに集まってくる。そういう環境で生きてきたから、Psycheもその流れの中で自然に生まれたブランドなんだよ。

たとえばPorterのポップアップにYoshiが来てくれたのも、僕が「この人たちをターゲットにしよう」と狙ったわけじゃない。ただ、僕がその場にいて、空間が生まれたから、彼らが自然と集まった。それだけの話。


つまり、「この人たちを引き寄せよう」と意図したわけではなくて、自然とそうなったんですね。


そう。でも、その根底には「意図」もあるんだよ。

僕は自分の生き方に意識的でありたいと思っているし、そういう生き方をしていれば、結果として強いコミュニティが生まれると信じてる。ただ、それは無理に作ろうとしたものじゃなくて、あくまで「自然に形成されるもの」。

たとえば、今日のこのインタビューだって、僕が「君たちと話すことに価値がある」と思ったから、こうして時間を作っているんだ。人によっては「今日は疲れているから会えない」ってなるかもしれない。でも、僕は「この対話を大切にしたい」と思ったから、ここにいるんだよ。

そういう姿勢が、そのままPsycheのブランドにも反映されてるんですね。Psycheは、ただの「食のブランド」というより、ファッションブランドやカルチャープロジェクトのようにも感じる。最近は、食とカルチャーをつなごうとするブランドが増えてるけど、多くはどこか不自然だったり、戦略的すぎたりします。そのなかでPsycheはすごく自然にカルチャーと結びついてる気がします。何か、意識して気をつけてることはありますか?


強いて言えば、「美意識」と「Taste(センス)」かな。

たとえば、Psycheのタイポグラフィにも僕のこだわりが詰まってる。デザインを担当しているのは、オランダ・アムステルダムの名門デザインスクールを卒業した人で、ABC Dinamoの創設者、ヨハネス・ブレイヤーに直接学んだ人なんだ。その彼と一緒にロゴをつくって、メインの書体にはABC Arizonaを採用した。

こうゆうこだわりって、案外多くの食ブランドは気に留めないんだけど、僕にとってはやって当たり前のことなんだ。なぜなら、僕は「オリーブオイルをつくること自体がアート」だと思っているからね。

これは、出版をやっていたときの考え方とまったく同じ。あの頃作っていた本は、今も人々の本棚に残っていて、中古市場では高値で取引されているものもある。それは、僕たちが「品質」にこだわっていたから。Psycheは、オリーブオイルの品質だけじゃなくて、デザイン体験を含めて、すべてに美意識を持って取り組んでいるんだ。

その他にも、「Taste(センス)」はすごく重要だと思う。

単に美意識を持って「良い商品をつくる」だけじゃなくて、文化的な背景がすべてに反映されていなきゃいけない。たとえば建築やインテリアでも、「お金をかければセンスが良くなる」わけじゃないよね。どれだけお金をかけても、センスがなければダメなものはダメ。


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そういう美意識やセンスって、どうやって身につけたんですか? 


今日みたいに旅の途中のときは例外なんだけど、基本的に僕はどこに行く時も必ずといっていいほどスーツを着るんだ。。僕がスーツを着るようになったのは、父親の影響が大きいように思う。

父は、キプロスの小さな村で育った人で、すごく貧しい環境だったんだけど、それでも毎日仕事には仕立てのスーツを着て行っていた。いつもピシッとした服装で、細部にまで気を配っていたんだ。そんな父の姿を見て育ったから、僕も自然と「服装には気を使うべきだ」って思うようになった。

それに、両親は僕を世界中の美術館に連れて行ってくれた。子どもの頃からクリーブランド美術館に通っていたし、海外の展示もたくさん見た。そういう体験が、僕の美意識を育ててくれたと思ってる。


あなたの話を聞いていると、多様な文化やコミュニティに対してすごくオープンな姿勢であるからこそ、自然と周りの人たちが「これ、いいよ」っていろんなものを勧めてくれて、結果的に多くの知識や経験が積み重なってきたんだなと感じます。


そう、それが一番大事なんだよ。オープンでいることが、新しいものと出会う最大の方法だからね。


そういえば、PsycheのInstagramを見てて面白いなと思ったんだけど、日本人ギタリストの日高理樹とイベントをやっていましたよね?

実は、僕もある仕事で日本の実験音楽プログラムに関わっていて、彼をイベントに呼んだことがあります。


それはすごいね! 理樹は僕の大切な友達なんだよ。最近、新しいアルバム『Spine』のCDを送ってくれたばかりなんだ。


彼の音楽、本当に好きです。どうやって彼と知り合ったんですか?


シンペイ、コウキ、トーヤたちを通じて知り合ったんだ。彼らのクルーとはずっとつながっていて、そこから自然と仲良くなった感じかな。


コウキ? もしかして、あのコウキ?


Theo: うん、コウキ・サトウだよ。


そうなんですね! じゃあ、日高理樹のソロパフォーマンスとかもやったことあるんですか?


Theo: あるよ。僕がコペンハーゲンでカフェをやっていた頃、そこで彼にライブをしてもらったことがある。


すごいですね! 食のブランドがこういう実験的な音楽イベントをオーガナイズするって、珍しいですよね?? でも考えてみたら、日高理樹の音楽とPsycheには、似たような強さがある気がします。表現の方法は違っても、同じ精神性を感じるというか。


それ、すごく嬉しい意見だな。結局のところ、すべては「リスペクト」なんだよ。僕は理樹の音楽と、彼の持つ芸術性を心から尊敬してる。だからこそ、彼の表現が自然とPsycheと結びついたんだと思う。


最後の質問です。僕たちのコミュニティには、「伝統的な食品を新しい形で発信したい」と考えている若い人たちが多いように思います。。

たとえば、何世代にもわたって醤油をつくってきた家の息子とか、日本酒の蔵元の跡取りとか。 彼らは、「どうやって伝統的な食品を新しい視点で伝えていけるか」に悩んでいます。。 そういう人たちに、何かアドバイスがあれば教えてほしいです。


答えはシンプルで、「自分らしくあること」。

たとえば、醤油ならヤマサ醤油みたいな老舗ブランドがあるよね? でも、もし自分がそこに関わるなら、「どうやって自分の視点を持ち込むか」が大事になる。

「どうすれば、これを“自分のもの”として表現できるか?」を考えればいい。

僕だって、オリーブオイルという伝統的なものを扱ってるけど、「自分のスタイル」を持ち込むことで、新しい形にしてきた。

だから、他の人の真似をする必要はまったくない。「自分が信じるものや面白いと思うことを、どう形にするか」に集中すればいいんだ。

たとえば、僕は「サステナブルなものを作りたい」と思っている。 いろんな理由が相まった結果、その結果、パッケージが“バッグ型”になった。でも、最初から「バッグにしよう」と決めていたわけじゃないんだ。

そして一番伝えたいのは、「この道は簡単じゃない」ってこと。覚悟しておいたほうがいい。ビジネスをやるってことは、毎日が戦いだよ。たぶん、泣きたくなる日もあると思う。これは本当に大変な世界。

でも、本気で向き合えば、何か特別なものを作ることができる。


本日はインタビューありがとうございます。


こちらこそ。最高の対話だった。ありがとう!


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