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更新日:2025年11月29日

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1970年代NYアーティストによる

アーティストのためのレストラン

「FOOD」が現代に復活

しかも今度は「本物のシェフ」付きで;)



2025年9月、突如としてチャイナタウンに姿を現した小さなレストラン『FOOD』。

毎晩あふれんばかりの人々と熱気に包まれるその空間を覗くと、まず目に飛び込んでくるのは、ニューヨークでは挑発的ともいえるほどカラフルなMax Lambの椅子。対照的に、淡茶色で素朴な存在感を放つOJASのスピーカーが静かに空気を震わせ、遊び心に満ちたAbel Nile New Yorkデザインのスラットウォールが壁一面に走る。そして奥には、まさかの河原恩「Today」シリーズの作品がディスプレイされている。


一般的なレストランとは到底言い難い空間だ。


実はこの「FOOD」、新しい店ではありながら、1971年にSoHoにオープンした同名のレストラン「FOOD」を前身としている。 前身となるオリジナルの「FOOD」は、若いアーティストにとって安価で健康的、そして人とのつながりを重視したコミュニティの中心だった。アーティストが接客し、アーティストが日替わりでキッチンに立つ――食そのものを装置とし、レストラン空間全体がひとつの作品として機能していた。ある日は Donald Judd、別の日には John Cage がゲストシェフとして名を連ねるなど、現在では伝説と語られるアーティストたちが料理を振る舞う場でもあった。そこには、共同創設者・Gordon Matta-Clark の「コミュニティの創出」という思想が力強く息づいていた。


そして、80年代後半にクローズした短命ながら伝説的なこのレストランが、アーティスト Lucien Smithによって現代に再び蘇ることになる。


新生「FOOD」の核となるのが、シェフのMathieu Canetだ。フランスのLe Saint-JamesLe Dauphinで長年研鑽を積んだ彼は、日替わりでアーティストがキッチンに立つというオリジナルの精神を引き継ぎつつ、全ての料理を監修し、「ただ安いだけ」の場所ではない、現代にふさわしい本格的なレストランとして「FOOD」を再構築している。

フランスへの一時帰国を控えるMathieuに、現代に蘇った「FOOD」への想い、そしてそこに宿る新しい可能性について話を聞いた。


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今日はお時間をいただきありがとうございます。まず、あなたのシェフとしてのキャリアがとてもユニークですよね。これまでの経歴について教えてもらえますか?


僕はフランス南西部のBordeaux出身です。14歳くらいのときに料理学校に入り、5年間通いました。その後、BordeauxのComptoir Cuisineというレストランで働き始めました。ブラッスリー形式で、魚も野菜もすべて新鮮な素材を使うので、スピードが求められる。とても良い修行の場でした。そこで4〜5年働き、20歳くらいで辞めました。


その後、Jean Nouvelが80年代に改装したBordeauxの高級レストランLe Saint-Jamesに入りました。若い料理人にとっては憧れの場所で、まさに「料理の未来」がつくられているようなレストランでした。


そこでIñaki Aizpitarteというシェフに出会いました。彼はLe ChateaubriandとLe Dauphinのオーナーシェフで、僕が一番憧れていた人でした。Le Saint-Jamesを辞めたあと、12月の忙しいシーズンにParisのLe Dauphinに入りました。驚いたことに、たった3か月後にシェフを任されたんです。本当に大きなチャンスでした。そこで10年間、濃密で刺激的な時間を過ごしました。今でも世界で最高のレストランのひとつだと思っています。現在のシェフAnthony Salomonも心から尊敬しています。いつか彼の料理を食べに戻りたいですね。


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とても体系的に料理を学ばれたんですね。そこからニューヨークに移って、Lucienと一緒に「FOOD」を始めたのはとても実験的なように感じます。ある記事で、LucienはFOODはミシュランの星を追いかけない、コミュニティを築くことのほうが大事だと言っていました。その考えについてどう思いますか?


Lucienとは6年前、Le Dauphinで出会いました。それからずっと連絡を取り合っていて、僕が店を辞めた2年ほど前に「ニューヨークで新しい空間をつくりたい」と彼が話してくれたんです。タイミングが完璧で、僕にとっても素晴らしいチャンスでした。僕たちが目指していたのは、「新しいホスピタリティ」をつくることでした。


僕にとってホスピタリティとは、思いやりや優しさのことです。お客さんがレストランという場の空気に押しつぶされず、心地よく過ごせることが大切だと思います。多くの店「エゴ」を持ちすぎていて、ゲストに「こう振る舞わなければ」と感じさせてしまう。でも、それはいい体験ではありません。もっと自由であるべきです。料理をどう感じるか、どう楽しむかは人それぞれ。完璧主義や評価にとらわれたレストランに、みんな少し疲れているように感じます。だからこそ、僕たちは、正直で、人間味のあるレストランの創造を目指しています。


Le Saint-JamesやLe Dauphinで学んだことと比べて、一番違うところはどこですか?


実は、今やっていることも他のレストランでの経験とそれほど変わらないですが、調理はできるだけシンプルにしています。この店は小さくて親密な空間なので、複雑にする意味がありません。お客さんは堅苦しいガストロノミックな体験を求めているわけではなく、心地よさを求めて来る。だから、キッチンの緊張感を感じさせるのではなく、家にいるような安心感を感じてほしいと思っています。僕たちは決して上から目線にならないようにしています。同じ目線で。上質な食材をリラックスした雰囲気で提供する。料理人の仕事は、素材を最も良い形で生かし、ゲストを気持ちよくさせることです。


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FOODは、空間デザインやディスプレイもユニークです。


そうですね。僕は空間にも恵まれていると思います。Le Saint-JamesはJean NouvelがLe DauphinはRem Koolhaasがデザインした特別な空間でした。FOODはANY(Abel Nile New York)が空間デザインを、スツールはMax Lamb、スピーカーはOjasが手掛けています。ワクワクする空間で働けることは素晴らしいことです。


NYらしい、アートとデザインが凝縮した空間ですね。店の奥にOn Kawaraが当たり前のように置かれているレストランなんて、世界中探してもここにしかないです。


その通りですね笑


KALEIDOSCOPEとも、Manifestoでコラボレーションされていましたよね。彼らが食をファッションやカルチャーの一部として捉える視点がとても好きです。どういう経緯で一緒に仕事をされたんですか?


KALEIDOSCOPEとは以前から知り合いで、3〜4年前にインタビューを受けたこともありました。Lucienとニューヨークで新しいスペースを始めると決めたとき、彼らが興味を持ってくれて、そのまま連絡を取り続けていました。それで彼らのイベント中に3日間のポップアップレストランをやることになったんです。彼らが空間構成を担当し、僕たちが料理を担当しました。Oscar Niemeyerが設計した建物で開催されて、とても良い雰囲気でした。


ここ「FOOD」は、70年代にアーティストたちによって運営されていたSOHOのレストラン「FOOD」にルーツがありますよね。そのコンセプトはあなたの料理にも影響していますか?


もちろんです。僕たちはオリジナルの「FOOD」を2025年の形で解釈しようとしています。ただし、当時の「FOOD」の精神、つまり優しさや、自由に提案する姿勢は大切にしています。メニューは毎晩変えていて、まったく同じ日はありません。その都度、メンバーも柔軟に変えています。過去に影響を受けつつも、コピーではなく、自分たちのやり方で形にする。自然と過去のエッセンスがにじみ出るものです。


毎晩メニューが変わるなんてすごいですね。大変ではないですか?


そこまで大変ではありません。Le Dauphinでもよく料理を変えていましたし、基本的なメニューの核は残します。効率もいいんです。食材が無駄にならないので。たとえば先週、赤ワインでじっくり煮込んだ牛頬肉を出しました。翌日はそれをほぐしてサラダにしました。まったく違う料理になります。厨房の常識ですね。無駄を出さないという。


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食材はどうやって仕入れているんですか?


マーケットをよく回ります。ファーマーズマーケット働く仲間がいて、彼が良い魚屋を紹介してくれました。あと、Aqua Bastという魚屋も使っています。ニューヨークに来て、こんなに質の高い食材が手に入るとは正直驚きました。


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特にチャイナタウンには新鮮な食材が多いですよね。


そうなんです。アップステートの農場とチャイナタウンのマーケット、両方から仕入れていますが、その組み合わせが本当に素晴らしい。たとえばこの前は、ファーマーズマーケットの高級なりんごとチャイナタウンの梨を合わせてフルーツプレートを作りました。その「混ざり合い」、地域の人たちと関わりながら料理をつくることこそ、この場所の意味なんです。



チャイナタウンで特に好きな食材はありますか?


昨日、新しく入ったスタッフがTaiwanese marshmallows(台湾風マシュマロ)を持ってきたんです(笑)。それはおもしろい味だった。ほかにもとうもろこし、トマト、レッドスナッパーが好きです。ヨーロッパではスナッパーが手に入らないので、味が力強くて、European red mulletに似ていますね。白ワイン、トマト、バジル、バターで煮込むと、魚の旨味がそのままソースになります。アーミッシュコミュニティの牛肉も本当に素晴らしいですよ。


このあとも市場へ行く予定です。地域の人たちと関わり、耳を傾け、オープンマインドでいることが大事。でも同時に、自分の軸を保つことも忘れないようにしています。


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最後の質問です。ミシュランの星や名誉を追いかけるタイプではないと思いますが、今後の目標はありますか?この場所がクリエイターたちのためのコミュニティにもなっているのが素敵だと思います。


そうですね。たとえば、あそこでスープを作っている彼はParsons出身で、Fine Artsを学んでいて、週末にここでスープを作っているんです。まさにそれがこの場所の目的なんです。料理をして、クリエイターを招き、コミュニティをつくる。


2日前には営業後に小さなパーティーを開きました。赤いドレスを着たデザイナーがデザートを作り、ファーマーズマーケットで花を扱う人も参加しました。みんなを尊重し、それぞれがやりたいことをやる。そんな場所です。うちのコーヒーも悪くないですよ(笑)。


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All Photography by Austin Aubry

 
 
 

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